木版用具取扱のページ
刷毛とブラシ
木版画では、摺刷時に版木の必要箇所に顔料(絵具)を摺り込むようにして塗って行きます。
その際に、使用するのが刷毛とブラシです。刷毛は、木版専用の刷毛や染色用の刷毛を使います。
この刷毛は、主に小品の制作や大作の摺刷面の小さな箇所に使用します。
木版画用ブラシは、靴を磨くブラシとほぼ同じ形をしています。摺刷面の大きな箇所や大作を制作する時に
多用します。これらの刷毛やブラシは、油彩や水彩用の筆と同じ意味を持ちますが、決定的に違う面も有ります。
油彩や水彩、アクリル絵画等は、制作の際、使用している筆を洗って別の色で着色する事が可能ですが、
木版画では、そうした方法を用いる事が、出来ません。
緑色と決めた刷毛、ブラシで赤系統や褐色系等の色を使う事は、禁物です。刷毛やブラシは其の構造上の
特質から顔料を完全に洗い落とすのが、とても困難です。ですから、一度青色で使用した刷毛、ブラシは、
同色でずっと使い続けて下さい。但し、其の色の系統色の範囲内であれば洗浄の後、変更出来ます。
(例・コバルト青からグレー系の青、グレーの青から青緑、青緑から青紫)
刷毛やブラシを使用する際には、最初に決定した色彩(系統色)を変更しない。これが、鉄則です。
1.「刷毛」
筆者が使用している刷毛の一部です。上段左端の二本は、木版専用ですが、他はすべて染色用の刷毛です。
小品の多色摺りは、殆どこれらの染色用刷毛を用いています。
刷毛とブラシは、一度に沢山購入する必要は有りません。使用する色が、徐々に多くなったらその都度
少しずつ買い足して行けば良いでしょう。
墨摺り専用に使う刷毛は、摩耗度が激しく消耗品として考えるべきですが、その他の色彩に使用する刷毛は、
大切に扱えば、永く使用できると考えています。
刷毛は、木版画材料の専門店で購入できますが、有名画材店の版画部門等にも常設されていますから
比較的購入し易いと思います。
2.「刷毛修理」
染色刷毛は、摺刷作業時とその後の水洗いの時に毛が、抜け落ちてしまう事が良くあります。
刷毛の構造的な特質で、ある程度は仕方ありませんが、それを防ぐ手段は、幾通りかあります。
ここで、筆者の用いている方法を紹介して置きます。
まず、抜け毛のある刷毛を良く水洗いして完全に乾燥させた状態にします。その後、毛の根元にニスか
各種の接着剤を薄めに塗って置きます。その際、刷毛の内部に接着剤が浸透しない様に注意して下さい。
これだけでも暫くは、抜け毛の無い状態で作業を続けられますが、やがて再び、毛が抜け落ちて来ます。
その際は、もう一度接着剤等を塗った後、純綿の水糸(タコ糸・0.9ミリ)で刷毛のボディ部分をきつく
巻き付けて置きます。《写真参照》
タコ糸は、一廻し乃至は二廻しさせたその都度ギュッと力を入れて強く締め付けて下さい。
最後は、確りかた結びにして置きます。当初は、念の為、刷毛に巻き付けたタコ糸全体にもニスを薄く
塗っていましたが、そうしなくても作業や洗浄の際に問題は無いので現在は、行っていません。
3.「木版用ブラシ」
ブラシは、版木の摺刷面が大きな処で主に使用します。大作には、欠かせない存在ですが、週刊誌大位の
小品なら必ずしも必要とはしません。染色刷毛か木版用刷毛で十分間に合うと考えます。
ブラシも刷毛と同様に一度使った色調を変える事は出来ません。色調が異なる度にブラシを必要としますが、
少しずつ買い揃えて行けば良いと思います。
4.「鮫皮」
木版画用のブラシは、一番最初に使用する時に《刷毛おろし》をする必要があります。
ブラシの毛先は、馬の尻尾等の硬い毛で出来ていますので其のままでは、硬くてとても使い難いのです。
其処で、毛先を鮫皮で擦り柔らかくほぐす様な状態にして使います。
刷毛おろしは、最初に使用する時に必ず行う作業ですが、作業を続けている間に毛先が、摩耗して使い難く
なります。その際は、もう一度刷毛おろしを行います。
刷毛おろし用の鮫皮は、版画材料を扱っている販売店の他、一般の画材店でも注文して購入出来ます。
5.「刷毛おろし」
刷毛おろしを行う一般的な方法を紹介します。
まず、ロウソクを一本用意して火を付けて下さい。この、ロウソクの火でブラシの毛先全体を焙ります。
先端に火が付いたりしない様に注意しながらブラシを動かし、全体を満遍なく焙って行きます。
やがて、毛先に熱が行きわたり、全体に泡が吹いた様な状態になったら作業は、終了します。
次に広げた新聞紙等の上でブラシの毛先部分を軽く擦る様にして表面の汚れを取り除き、その後、
ぬるま湯か水で毛の部分を湿らせて置きます。もし、水分が多い様でしたら水気を確り切って下さい。
ここで、鮫皮を使って所謂「刷毛おろし」の作業に入ります。
鮫皮の表面は、角質化した皮膚が鋭い突起状の「とげ」の様になっています。この「とげ」にブラシの毛先
を擦り付ける事で毛先の先端が枝分かれして、柔らかく使いやすい状態になってくるのです。
「とげ」には、角度があって頭部から尻尾にかけて滑らかな状態になっていますが、刷毛おろしをするには
「とげ」の流れの逆方向に擦ります。その際、ブラシは両手で強く、しっかり持って作業を行って下さい。
うっかりすると指先を「とげ」で傷つけてしまう事があるので十分な注意が、必要です。
暫く作業を行った後、ブラシの毛先を触ってみて下さい。ソフトで柔らかな感じになっていたら、これで
刷毛おろしの作業は、終わりです。
(木版画用の手刷毛の場合は毛先が長いので、毛の根元を水糸か輪ゴムで巻き付けておくと作業が、
し易くなります。)
彫刻刀を砥ぐ
版画を学んでいる人たちの中には、彫刻刀を自分で砥ぐ事が出来ずに刃物店に依頼する方がいます。
木版画を制作する為には、やはり、自ら彫刻刀を砥ぐ必要性があります。制作意欲が、盛り上がって
来た時に彫刻刀が切れない、砥げないでは折角膨らんだ創作への気持ちが、凋んでしまいます。
筆者も木版画を始めるまでは、刃物を研ぐ経験は皆無でした。全て独習で体得したので専門家の方
の様に完璧な砥ぎは、出来ませんが、ここで自分の学んだ砥ぎ方を紹介して置きます。
彫刻等には、様々な種類のものが有りますが、ここでは、木版画制作に最もよく使用する
平刀<アイスキ>、丸刀<コマスキ>、版木刀<キリダシ>の三種類について述べて行きたいと思います。
砥石について
@「仕上げ砥」
仕上げ用の天然砥石です。筆者が、独習で木版画を始めた頃、近所の小さな金物屋で棚の隅に埃を被って
置かれていたのを見つけて購入しました。とても滑らかな感触で砥ぐ事が出来ます。
上手く砥げた時の切れ味は、抜群ですが、砥ぎの技術が未熟だと返って刃物が、切れない場合も有ります。
木版画で使用する場合は必ずしも天然砥石である必要は無く、一般的に入手出来る砥石で十分だと
考えます。
A「中砥と荒砥」
彫刻刀を砥ぐには、「中砥石」と「仕上げ砥石」の二種類を使います。彫刻等を砥ぐ際は先ず「中砥石」を使って
砥ぎ、次に仕上げ砥を使います。
「荒砥石」は、中砥や仕上げ砥に比べて表面が硬くザラザラとした感じの砥石です。荒砥石を使用する機会は、
余りありませんが、うっかり刃物の先を折ってしまった時などに元の形に修正する際に、この砥石を使います。
一つ持っていれば万一の時に安心です。
B「彫刻刀の砥石」
彫刻刀の砥ぎの為に作られた砥石は、一般的なものと比べて掌に載る位のコンパクトな大きさです。
写真の砥石は、中砥石と仕上げ砥、それに丸刀<コマスキ>の裏刃を砥ぐ為の小さな砥石が、ふたつ付いた
セットで購入したものです。
表面には、幾本かの溝が有り、丸刀や浅丸刀を砥ぐ時に使います。但し溝の幅が、限られていますから
幅の小さい1.5ミリ位の丸刀を砥ぐには、砥石の空いたスペースに糸鋸を使って溝を作り、其処で砥ぎます。
C「砥石の裏面」
専用の砥石を裏返すと普通の砥石と同じで滑らかな面になっています。ここで、平刀や版木刀<キリダシ>を
砥ぎます。但し、10ミリから15ミリ幅位の大きな平刀は、普通の長めの砥石の方が作業が、し易いと
思います。
写真Cの砥石は、筆者が愛用しているものですが、両端に丸刀用の溝を作ってあります。その為、平刀を
砥ぐ面が少し狭くなっているので小さめの平刀や版木刀を砥ぐ時だけ使っています。
D「裏刃用の砥石」
丸刀の裏刃を砥ぐ為の小さな砥石です。茶系が中砥石で黄土系の砥石が仕上げ用です。
表刃を研いだ後に、この砥石の丸みを帯びた側面へ丸刀の裏刃面を当てて軽く数回だけ砥ぎます。
彫刻刀を良く切れる様に砥ぐには、実は表刃だけで十分なのですが、其の際に裏刃側に「めくり」、
あるいは「めくり刃」と呼ばれる鉄の滓が付着します。それを取り除いてきれいにする為に裏刃を砥ぐのです。
ですから、必要以上に裏刃を丁寧に砥ぐ必要は有りません。また、裏刃の砥ぎ方は、砥石は違ってきますが
平刀や版木刀でも同じ方法をとります。
ちなみに筆者の経験では、裏刃を砥ぐ際には最後の「仕上げ砥」だけでも問題ないと考えています。
砥ぎ方の基本
砥石は、使用する少し前に全体を水で濡らして十分な水分を与えて置きます。無理の無い砥ぎの作業
を行う為です。バケツや洗面器に水を張り中砥石や仕上げ砥を纏めて浸けて置く方法が一般的ですが、
筆者は、臨機応変に砥ぎの作業を行いたいのでアクリル画などに使用する合成樹脂の水差しを脇に置き
、砥石に十分水を与えてから使っています。必要があれば作業中に少しずつ水を加えます。
また、台座の付いていない砥石は、濡れた布巾を下に敷くとしっかり固定され机を汚す心配も有りません。
次は、砥ぐ作業を行う際の姿勢について説明します。
砥ぎの作業で最も大切な事は、刀を砥ぐ角度がしっかり固定されている事です。手先だけ動かしていたのでは、
角度は、安定しません。
安定した角度で刃物を研ぐには、手首から肘を自由に使える様、椅子と机の関係を調整する必要があります。
肘から手首までが、妨げなく自由に動かせるように椅子を少し高めにして置きます。また、背中は座席に対して
直角に背筋をピンと張った状態で作業をして下さい。手先で無く、背筋と肘を使って砥ぐ気持ちが大切です。
正しい姿勢を保ちながら砥ぎの作業を行う事で刀は、安定した角度を保ち、結果的に早く良く切れる状態に
なります。これは、立って作業を行う際でも同様です。
A.「平刀の砥ぎ」
砥石に十分水を与えた後で砥ぎに入ります。一般的には右手で刀を持ち左手の人指し指、中指の二本を
補助的に添えます。<写真は、左ききの持ち方です。>
砥ぎの中心は、表刃ですから其の面を砥石表面にピッタリ付着させ、落ち着いて上下に砥いで行きます。
砥ぐ際は、あまり力を入れ過ぎない様に注意して下さい。補助に添えた指二本に心持ち圧力がある位で良いと
思います。
また、刃物を研ぐ時、押す方(上)に力を入れるのか、それとも引く方(下)に力を使うのか諸説ありますが、
筆者は、自身の経験から上下均等に砥いでいます。その際に、心掛けて欲しい事が、一つあります。
上下運動を続けながら砥石を右から左へと少しずつ移動させて行くのです。
砥石の右端から始めたら左端まで徐々に移動させ、今度は、左端から右端へと移動します。
砥石全体を使って砥ぐ事で、砥石の表面が常に平らで滑らかな状態を保つ事が、出来ます。
もし、砥石の中央だけで砥いでいると、そこだけ大きく窪んで来て、作業の妨げになってしまいます。
其の場合は、一つ硬度の高い砥石を使って擦り合わせる事で、元の平らな面に戻せます。
仕上げ砥をきれいにしたいなら中砥、中砥石なら荒砥と組み合わせます。
その際、両方の砥石に十分に水分を与えた状態で作業を行って下さい。
B.「刃の角を砥ぐ」
平刀<アイスキ>を砥ぐ場合に大切な作業が、一つ有ります。
平刀の両角も砥いで丸みを与えておくのです。<上の写真Cを参照>
両角に丸みが、有ると浚いの際に周囲に刃の角を引っ掛かける事無く、円滑に作業を進められます。
角を砥ぐには、通常の砥ぎ方と同じ順序で行います。<中砥石から始めて仕上げ砥へ>
次に、筆者が、行っている砥ぎ方を説明します。
最初に平刀の右か左の角を<写真B>の様に角の部分だけを砥石に当てます。
次に小さく円を描くようにクルクルと回転させながら角を砥いで行きます。ここでも、砥石の一部分だけでなく
全体を使って砥ぐ様にして下さい。
小さく回転させながらも、砥石上の刀の動きは写真A「平刀の砥ぎ」左にある図版と同じように
上から下へ、そして、徐々に右から左へと動かしてして下さい。
一箇所ばかりで砥いでいると、すぐに砥石が凸凹になってしまいます。
一方の角の砥ぎが、終了したら次は反対側の角も同じ方法、で作業を続けます。
その際、大切な事は、左右の角を均等にバランス良く砥ぐ事です。
例えば、右の角を一分間掛けて砥ぎを行ったなら左側の角も同じ一分間作業をして下さい。
中砥石でこの作業を終えたなら次に仕上げ砥でも同じ方法に拠る砥ぎを行って下さい。
C.「平刀裏刃側」
平刀の角が、丸みを帯びています。この様にしておけば浚いの時に仕事が、進め易くなります。
但し、あまり小さな平刀には、必要は、無いでしょう。筆者は、角を丸めるのは3ミリ幅迄としています。
1.「丸刀の砥ぎa」
一般用の砥石を使った丸刀の砥ぎ方を説明します。
砥石は、通常は縦長に置いて使いますが、ここでは、横に置いて丸刀の表刃を左右に大きく動かしながら
砥いで行きます。その際、重要な点は、刀を左右に使うときに手首に回転運動を加える事にあります。
刀を固定させた状態では、丸刀表刃の中央だけしか砥ぐ事が出来ず、返って刀が切れなくなってしまいます。
手首に捻りを利かせて表刃の中央と両サイドを均等に砥ぐように心掛けて下さい。
砥石の左端に刀がある時は、表刃右サイド、右端なら表刃は左サイドが、常に砥石上にあります。
筆者は、大きめの丸刀を砥ぐ時にこの方法を使っています。
2.「丸刀の砥ぎb」
彫刻刀専用の砥石で砥ぐ時は、刀の幅と同一サイズの溝に当てて作業を行います。
原則的には丸刀表刃を溝に固定させて上下に砥いで行けば良い訳ですが、筆者の経験では、
この方法の場合、刃の中央部分に比べて両端部分の砥ぎが弱いと感じます。<刀の持ち方は、写真3を参照>
其処で筆者は、溝の中で上下運動を行いながら左右にも半回転させる運動を加える形で砥ぎを行う様に
しています。
慣れないと少し砥ぎにくい技法ですが、この方法なら刃の全面が、万遍なく砥げると考えています。
但し、回転運動を加える場合は、写真3の上下に砥ぐ際の基本的な持ち方は、しません。
ここでは、刀の握り部分の頭部を親指、人差し指、中指、薬指で摘むようにして持ちながら左右に
半回転させながら更に上下運動も行うのです。
その際、反対側の人差し指と中指は、溝に当てた丸刀を補助する為に軽く添えるようにして置きます。
現在、筆者は、一本の丸刀を溝付き砥石で砥ぐ場合に上下運動だけの砥ぎ方と、左右半回転を加えた
方法を交互に行って行っています。回転付きの砥ぎが 7、上下運動のみが 3 位の割合です。
今までに色々な技法を試してみましたが、この砥ぎ方が、一番良く切れる方法と思っています。、
3.「版木刀の砥ぎ」
版木刀の砥ぎ方にも作家に拠って幾種類かの方法があるようですが、ここでは、筆者が行っている
砥ぎ方を説明します。
まず、版木刀を右手に持ちます。上から見ると刀は、ほぼ垂直の位置にあります。
そして、砥石に表刃をピッタリと当てます。写真3では、刀の位置と右手の状態が確認出来ますが、
左手がどの様な状態なのか判りません。刀の位置と右手の関係を明確にする為に左手側を省いた為です。
実際は、この時、左手人差し指と中指を刃の根元辺りに軽く添えます。砥ぎを行う刃の面<表刃>が、作業中
に動いたりしては、切れ味の良い砥ぎにはなりません。砥石に当たる表刃の角度を確り固定させる為にも
反対側の手の働きが、大切になってきます。
準備が、整ったら上下方向に動かして砥いで行きます。平刀や丸刀を砥ぐ時と全く同じように背筋を伸ばして
手首と肘が、自由に使える状態で作業を行って下さい。
4.「峰おろし」
版木刀(キリダシ)の「峰」と呼ばれる先端の背面部を砥いで少し角度を付けておきます。
こうすると刃の先端が、強化されて切り回しの際も使いやすくなります。
但し、筆者の経験では、<3ミリ幅>や<1.5ミリ幅>程度の小さな版木刀には、「峰おろし」の必要は無いと
考えています。
砥ぐ場合は、中砥から仕上げ砥への順で行います。
変則的な方法ですが、筆者は砥石の側面部を利用して「峰おろし」を行っています。
まず、側面部を上にして刀を一定の位置で砥ぎます。やがて、そこに溝が出来ますので次回に砥ぐ際は、
その溝を使って砥いで行きます。
版木刀は、其のまま使用しても何の問題も有りません。「峰おろし」を全く行わずに版木刀を使う著名な
作家もいました。
初学者の方は、実際に経験したうえで自分の感性に合った方法を取れば良いでしょう。
彫刻刀の手入れと保管
彫刻刀を砥いだ後には、刃の部分をボロ布等で丁寧に拭って水気を切って下さい。
その後は、ほんの少し「椿油」を刃の全体に付けておきます。これで、刃が錆びる心配は有りません。
筆者は、人差し指で薄く塗る様にして油を付けています。但し、この方法は、怪我をしないよう十分な注意
が必要です。
他に安全な方法として、油を浸み込ませたボロ布で刃を擦り付けたり、拭ったりする方法も有ります。
使用する油は、整髪に使う「椿油」が最適と考えますが、他の機械油を使用しても問題有りません。
梅雨の時期には、注意が必要です。梅雨入り前に全ての彫刻刀を上述の方法で確り処置して置けば
長期間使用しなくても、まず安心です。これは、ぜひ実行して下さい。
<筆者は、以前に梅雨入り前の手入れを怠って何本もの刀を錆び付かせてしまった苦い経験が、ありました。>
また、彫刻刀を保管して置く為に木箱やそれに類するものを用意して下さい。箱は、有りあわせのもので
構いません。埃や、湿気から刀を守る為に必要です。また、放置された彫刻刀に拠る怪我や事故を未然に
防ぐ意味も有ります。
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